デプロイと拡張¶
flower を別の場所に持っていくとき、扱うことは三つある。コンテナ(制限のない Bash を囲い込む、 ついでに「CLI から独立している」という主張を検証する)、 plugin(ドメイン能力がリポジトリに付いて回る。ホストマシンに何が入っているかは見ない)、 ドキュメントサイト(main に push すれば自動で公開、install.sh は Pages のドメインにぶら下げる)。 三節は互いに独立しているので、必要なものだけ読めばいい。
一、コンテナ¶
なぜコンテナか¶
一つ目は囲い込み。 実作業をするワーカーは制限のない Bash を持つ —— flower の Bash ホワイトリスト(delegate_guard)はメインスレッドだけを見ており、 送り出した相手にはテストを走らせられる必要がある。これは意図的だ。 コンテナにはあなたのプロジェクトディレクトリだけをマウントし、フレームワークのソースはイメージ内の /opt/flower に置く。 ホストの他の場所は見えない。
二つ目は、これ自体がポータブルという制約の検証になっていること。 イメージには Claude Code CLI もなければ Node もない。あるのは Python と claude-agent-sdk だけ —— リクエストは wheel に同梱されたネイティブバイナリが送る。 ここで動くなら、「CLI から独立している」は紙の上の話ではなくなる。
実測で通過(2026-09-06、macOS 15 / arm64 / colima + docker 28.4.0):
| 検証対象 | 結果 |
|---|---|
| イメージに CLI があるか | claude、node、npm、npx はいずれも存在しない |
| 同梱バイナリ | \177ELF(207M) |
| 実リクエスト | cloud.infini-ai.com/maas 経由で送信し応答を取得、$0.1741 / 1 ターン(Opus 5 + 1M ウィンドウのシングルターンの下限価格がこれ) |
| ファイルの所有者 | コンテナ内で /work に書いたファイルはホストでは hechenyu:staff、マッピングは正しい |
| ホストの可視性 | コンテナ内で ls /Users → No such file or directory |
イメージに何が入っているか¶
ベースイメージは python:3.13-slim、その上に apt で三つのパッケージだけを入れる。どれにも理由がある:
| 入れるもの | 理由 |
|---|---|
python:3.13-slim | 必要なのは Python ≥ 3.10 だけ。Node も claude CLI も入れない |
git | --isolate は subagent ごとに worktree を割り当てる |
ca-certificates | HTTPS ゲートウェイを通る |
libstdc++6 | SDK 同梱のバイナリは Bun でコンパイルされた単一ファイルで、Linux ではこれが要る。slim イメージには入っていない |
フレームワークのソースは COPY でイメージに入る。bind mount ではない —— だからコンテナ内の agent は ホストのフレームワークソースに触れられない:
| イメージ内パス | 内容 | 由来 |
|---|---|---|
/opt/flower | pyproject.toml、flower/、examples/。ここで pip install . する | COPY |
/work | 作業ディレクトリ(WORKDIR)、実行時にホストの $PWD をマウント | docker run -v |
エントリポイントは ENTRYPOINT ["flower"]、CMD は空 —— 引数なしでコンテナを起動すると対話入力に入る (何をしたいかを聞いてくる)。--help は出さない。こうすれば、日本語の要求を shell でクォートする必要がなくなる。
なぜホストの .venv をマウントできないのか¶
SDK はプラットフォーム別に wheel を配布しており、同梱バイナリはプラットフォーム専用だ:
宿主 claude_agent_sdk-0.2.152-py3-none-macosx_11_0_arm64.whl
→ _bundled/claude 是 Mach-O 64-bit arm64,191M
容器 claude_agent_sdk-0.2.152-py3-none-manylinux_2_17_aarch64.whl
マウントしても動かないので、イメージ側で自前に pip install するしかない。裏を返せばこれはポータビリティの証拠でもある: 同じ pyproject.toml で、プラットフォームを変えればネイティブバイナリが差し替わり、フレームワークのコードは一行も変えなくていい。
二つのスクリプト¶
| スクリプト | 何をするか |
|---|---|
docker/build | イメージをビルドする。リポジトリルートに cd して docker build -f docker/Dockerfile -t flower-box .。FLOWER_MIRRORS=1(デフォルト)のときは先に registry ミラーから python:3.13-slim を pull して retag し、pip / apt の --build-arg を付ける |
docker/flowerbox | 一回実行する。認証情報ファイルを確認 → $PWD がマウントできるか確認 → TTY の有無を判定 → docker run |
docker/build のスイッチはすべて環境変数:
| 変数 | デフォルト | 意味 |
|---|---|---|
FLOWER_IMAGE | flower-box | イメージ tag |
FLOWER_MIRRORS | 1 | 0 = ミラーを一つも使わず、すべて上流に行く |
FLOWER_REGISTRY | dockerproxy.net | ここからベースイメージを pull して python:3.13-slim に retag し、FROM をローカルにヒットさせる |
FLOWER_PIP_INDEX | https://mirrors.aliyun.com/pypi/simple/ | --build-arg PIP_INDEX_URL に渡す |
FLOWER_APT_MIRROR | mirrors.ustc.edu.cn | --build-arg APT_MIRROR に渡す |
後ろの三つは FLOWER_MIRRORS=1 のときだけ効く —— FLOWER_MIRRORS=0 の分岐では build-arg をそもそも設定しない。
docker/flowerbox が見るのは二つ:
| 変数 | デフォルト | 意味 |
|---|---|---|
FLOWER_HOME | スクリプト自身の位置の一つ上(つまりリポジトリルート) | .env をどこに探すか。$FLOWER_HOME/.env が見つからなければ即座に 1 で終了 |
FLOWER_IMAGE | flower-box | どのイメージを動かすか |
FLOWER_HOME はスクリプト自身の位置から導出しており、パスをハードコードしていない。だからリポジトリをどこに clone しても使える。
イメージをビルドしてコンテナを起動する¶
docker/build # 一度だけでいい
cd ~/任意のプロジェクトディレクトリ # 必ず $HOME 配下に。下のマウント境界を参照
/path/to/flower/docker/flowerbox # 引数なし → 何をしたいか聞いてくる。クォート不要
pypi.org / Docker Hub へのネットワークが正常なら、ビルドはこう:
flowerbox の引数は flower と完全に同じ —— "$@" をそのまま ENTRYPOINT の後ろに繋ぐだけだ。 --clarify-only、--asks N、--timeout 秒数、--isolate、-v もそのまま渡せる。全表はコマンドラインに:
cd ~/proj
/path/to/flower/docker/flowerbox --clarify-only -v
/path/to/flower/docker/flowerbox "Xを作ってほしい"
実際に実行されるのはこの一行(-t は TTY がある場合のみ付く。下記参照):
docker run -i $TTY --rm \
--env-file "$FLOWER_HOME/.env" \
-v "$PWD:/work" \
-w /work \
"$IMAGE" "$@"
マウント境界と永続化¶
だから flower/human-test/HT001 のようなリポジトリ内のサブディレクトリで動かしても安全だ: マウントされるのは HT001 だけで、フレームワークのソースはマウント範囲に入らない。
| 対象 | 終了後も残るか | 理由 |
|---|---|---|
ホスト $PWD 配下のすべて(runs/、ワークベンチ .flower/ を含む) | 残る | それが /work としてマウントされているディレクトリそのものだから |
| コンテナ内の他のパスに書いたもの | 残らない | --rm、コンテナ終了と同時に消える |
| 認証情報 | イメージレイヤーに入らない | --env-file 経由。.dockerignore で .env を除外しているので、COPY . . でも入らない |
プロジェクトディレクトリは必ず $HOME 配下に。そうでないと成果物が黙って失われる
colima はデフォルトで $HOME だけを VM にマウントする(mount | grep virtiofs → mount0 on /Users/<ユーザー名>)。 /tmp のような場所で動かすと、-v は VM 内に空のディレクトリを作り、そこに書いたものはホストからは永遠に見えない。 しかもエラーも出ない —— 成果物、ブリーフ、runs/ がすべて失われる。一度踏んだ: once を一回走らせて $0.17 を使い切ったのに、runs/ はホスト上にそもそも存在しなかった。
flowerbox は現在このケースを止める:$PWD が $HOME 配下ならそのまま通す。そうでなければ $PWD に プローブファイルを書き、もう一つコンテナを起こして test -f /work/<プローブ> で実測する(追加マウントを設定していれば通る)。 通らなければ 1 で終了し、colima start --mount '<パス>:w' を案内する。プローブはコンテナを起こすので、先に docker/build が必要。
認証情報はどうやってコンテナに入るか¶
docker run --env-file 経由で、イメージレイヤーには入らない。flowerbox が読むのは $FLOWER_HOME/.env、 デフォルトではリポジトリルートの .env だ:
注意:flower setup が書くのは ~/.config/flower/.env で、そのパスを flowerbox は見ない。 すでに setup で設定済みで、もう一部コピーしたくないなら FLOWER_HOME をそちらに向ける:
キー名、優先順位、ゲートウェイの書き方は設定を参照。
TTY がないと、質問は --timeout まで固まり続ける
flowerbox は [ -t 0 ] のときだけ -t を付ける —— パイプや CI の中で docker run -t すると 「the input device is not a TTY」で即エラーになる。-i は常に必要で、これがないと stdin がそもそも入らない。
質問への回答は標準入力を通る。TTY がないと input() が最初の一回で EOFError を投げ → その質問は 「入力が閉じた」として飛ばされ、しかも回答スレッドがそのまま終了する。だから二つ目以降の質問は誰も受けず、 --timeout(デフォルト 1800 秒)いっぱいまで待つしかない。無人運用では明示的に --timeout 0 を指定すること。 スクリプトは TTY がないことを検出すると、先に一行注意を出す。
git submodule¶
.gitmodules には一行しかない:
| path | url | 何か |
|---|---|---|
human-test/HT001 | https://github.com/ChenyuHeee/cppide.git | HT001 の run が生み出したコードリポジトリ。記録用 |
通常の git clone ではこれを取ってこないので、human-test/HT001 は空のディレクトリのままだ (git submodule status の先頭に - が付くのがこの状態)。扱うべきかどうか:
| やりたいこと | 初期化が必要か |
|---|---|
| flower を動かす、イメージをビルドする | 不要。.dockerignore が human-test/ を除外しているし、Dockerfile はそもそも pyproject.toml / flower / examples しか COPY しない |
| ローカルで HT001 の成果コードを読む | 必要:git submodule update --init human-test/HT001、または最初から git clone --recurse-submodules |
中国国内のネットワーク:なぜあれだけミラー差し替えがあるのか¶
この一式を Great Firewall の内側で入れるとき、遅いのは帯域ではなく国際回線だ。デフォルトの docker/build は 差し替えるべきものをすでに全部差し替えてあり、FLOWER_MIRRORS=0 で一括オフにできる。以下は実測データと 四箇所の差し替えの経緯 —— ネットワークにこの問題がないなら読まなくていい。
実測速度表と四箇所の差し替え(2026-09-06、macOS/arm64)
| ソース | 速度 |
|---|---|
pypi.org(インデックス) | 32 KB/s |
files.pythonhosted.org(パッケージファイル) | 284 B/s |
github.com(release asset に直接) | 22 KB/s |
cloud-images.ubuntu.com | 382 B/s |
deb.debian.org | 32 KB/s |
ports.ubuntu.com(VM 内) | 26 KB/s |
download.docker.com | 接続不可(HTTP 000);VM 内では 4 KB/s |
mirrors.tuna.tsinghua.edu.cn | 接続不可 |
mirrors.aliyun.com/pypi(パッケージファイル) | 1.4 MB/s(ホスト)/ 152 KB/s(VM 内) |
mirrors.ustc.edu.cn/ubuntu-cloud-images | 28 MB/s |
mirrors.ustc.edu.cn/ubuntu-ports(VM 内) | 1.95 MB/s |
mirrors.ustc.edu.cn/debian | 435 KB/s |
ghfast.top(GitHub プロキシ) | 2.5 MB/s |
gh-proxy.com(GitHub プロキシ) | 1.5 MB/s |
dockerproxy.net(Docker Hub プロキシ) | 利用可(manifest をそのまま返す) |
計測するときはインデックスページをパッケージファイルと取り違えないこと:mirrors.aliyun.com/pypi/simple/ の あのページは 7.4 MB/s 出るが、本体である 95.9 MB の wheel は 1.4 MB/s しかない(VM 内では 152 KB/s —— colima の ユーザー空間ネットワークにロスがある)。時間はパッケージファイルの数字で見積もること。
差し替え 1 —— colima の VM イメージ。 colima が使うのは普通の Ubuntu cloud image ではなく、 docker をプリインストールした独自イメージ(abiosoft/colima-core の release asset)だ。だから VM 起動時に apt で docker を入れる必要がなく、接続できない download.docker.com を回避できる。自分でダウンロードしてから --disk-image で食わせる:
A=https://github.com/abiosoft/colima-core/releases/download/v0.9.0-2/ubuntu-24.04-minimal-cloudimg-arm64-docker.qcow2
mkdir -p ~/.colima/images
curl -sSL -C - -o ~/.colima/images/colima-arm64-docker.qcow2 "https://ghfast.top/$A"
# 検証: digest は GitHub API から取る。飛ばさないこと —— VM として動かすものだ
curl -sSL https://api.github.com/repos/abiosoft/colima-core/releases/tags/v0.9.0-2 \
| python3 -c "import json,sys;[print(a['digest'],a['name']) for a in json.load(sys.stdin)['assets'] if a['name'].endswith('arm64-docker.qcow2')]"
shasum -a 256 ~/.colima/images/colima-arm64-docker.qcow2
colima start --disk-image ~/.colima/images/colima-arm64-docker.qcow2 \
--cpu 4 --memory 6 --disk 20
プロキシは途中で切れることがある(実測 curl 56)。-C - のレジューム付きで何度かやり直せばいい。
差し替え 2 —— VM 内の apt。 docker プリインストール済みイメージを使っても、lima の boot スクリプト 30-install-packages.sh は rsync を入れるために apt-get update を一度走らせる —— ports.ubuntu.com(26 KB/s)と download.docker.com(4 KB/s)を叩き、数十分固まる。
対処(先に /mnt/lima-cidata/boot.sh を読んでから手を動かすこと:失敗した boot スクリプトに対しては WARNING + CODE=1 を出して続行するだけで、しかも末尾で必ず /run/lima-boot-done を書く。だからその ステップを失敗させても安全だ):
export LIMA_HOME=~/.colima/_lima
limactl shell colima -- sudo sh -c '
cat > /etc/apt/sources.list.d/ubuntu.sources <<EOF
Types: deb
URIs: https://mirrors.ustc.edu.cn/ubuntu-ports/
Suites: noble noble-updates noble-backports noble-security
Components: main restricted universe multiverse
Signed-By: /usr/share/keyrings/ubuntu-archive-keyring.gpg
EOF
sed -i "s|https://download.docker.com|https://mirrors.ustc.edu.cn/docker-ce|g" \
/etc/apt/sources.list.d/docker.list
pkill -f "apt-get update" # boot.sh はそのまま走り切って完了マーカーを書く
'
# colima start はこの後正常に終了する。あとで rsync を補う(今なら 1.95 MB/s)
limactl shell colima -- sudo sh -c 'apt-get update -q && apt-get install -y -q rsync'
ついでに 127.0.0.1 lima-colima を VM の /etc/hosts に足しておくと、sudo: unable to resolve host の 警告の列が消える。
差し替え 3 —— ベースイメージ。 docker/build はまず dockerproxy.net から python:3.13-slim を pull し、 retag して Dockerfile の FROM をローカルにヒットさせる。実測では dockerproxy.net は manifest を直接返す (HTTP 200)。docker.1ms.run / docker.m.daocloud.io は 401、hub.rat.dev は 302、 docker.xuanyuan.me は 403 だった。
差し替え 4 —— コンテナ内の apt と pip。 --build-arg APT_MIRROR=mirrors.ustc.edu.cn (deb.debian.org 32 KB/s → USTC 435 KB/s)、 --build-arg PIP_INDEX_URL=https://mirrors.aliyun.com/pypi/simple/。注意:PIP_INDEX_URL は pip 自身が認識する環境変数でもあるので、ARG を宣言した時点で RUN 内の pip がそれを読む —— --index-url を明示しなくても効く。
一度きりの準備にかかる合計時間(上記のネットワーク条件下)はおよそ 25 分、大半は 364 MB の VM イメージと 95.9 MB の SDK wheel だ。その後の flowerbox の起動は秒単位になる。
二、plugin¶
plugin とは何か、SDK はどう読み込むか¶
リポジトリに付いて回るドメイン能力パッケージだ。フレームワークのコードはドメイン知識を一切含まず、 ドメイン知識はすべてリポジトリルートの plugin/ ディレクトリに置く。コードと一緒に clone され、 一緒に review され、一緒に tag が打たれる。
SDK 側の配線は flower/core/agent.py の build_options() の中の二行:
PLUGIN_DIR = Path(__file__).resolve().parent.parent.parent / "plugin"
...
if use_plugin and PLUGIN_DIR.is_dir():
opts["plugins"] = [{"type": "local", "path": str(PLUGIN_DIR)}]
setting_sources=[](後述)と合わせて、これが flower が「ポータブル」と 「あなたのドメインを理解する」を同時に満たせる理由だ:ホストマシンに何が入っているかは問わず、 リポジトリが持ってきたこの一つのディレクトリだけを見る。
ディレクトリ構成¶
| パス | 何を置くか | いつ効くか | 誰が決めるか |
|---|---|---|---|
plugin/.claude-plugin/plugin.json | パッケージの素性:name、description、version、author | 読み込み時に一度読む | — |
plugin/skills/<name>/SKILL.md | ドメイン知識、必要に応じて読み込む | 確率的 —— モデルが関連すると判断したときだけ使う | モデル |
plugin/agents/<name>.md | subagent、独立したコンテキストウィンドウ | モデルが委譲するか、ワークフローで明示指定 | モデル / あなた |
plugin/hooks/hooks.json | ツール呼び出しを横取りする | 決定的 —— マッチすれば実行 | コード |
plugin/.mcp.json | 外部ツールの接続 | ツールとして登録され、組み込みツールと同じに扱われる | モデル |
確率的と決定的の違いは選定の要であって、言い回しの違いではない:
- skill はそこに置いてある知識だ。モデルはその
descriptionを見て、現在のタスクと関連すると思ったときに読みに行く。 関連性の判断はモデルがやるので、同じ一言で二回走らせると、一度は使い、一度は使わない、ということが起こりうる。 - hook はコードだ。イベントにマッチすれば走る。モデルがそうしたいか、知っているかは無関係。flower 自身の スピルや隔離が hook なのは、まさにそれらが「ときどき効く」では困るからだ。
だから判断基準は一つだけ:これは毎回必ず起きなければならないか? 必ず起きるべきなら hook を書く。 「知っていると得をする」程度なら skill を書く。必須のことを skill にするのは、規律をモデルの一回の判断に賭けることに等しい。
いま リポジトリの plugin/ にあるのは二つだけ:.claude-plugin/plugin.json と skills/example/SKILL.md。 agents/、hooks/、.mcp.json はまだ存在しない —— 使うなら自分で作る。ディレクトリ名は上表のとおり固定だ。
skill を一つ書く:完全な例¶
「リリースノートを生成する」を例に、ゼロから有効化の確認まで。
第一歩:ディレクトリを作る。 ディレクトリ名がそのまま skill 名で、frontmatter の name と揃える。
第二歩:plugin/skills/release-notes/SKILL.md を書く。 ファイル名は必ず SKILL.md、大文字。 形式は YAML frontmatter + Markdown 本文、frontmatter のフィールドは二つ:
| フィールド | 役割 |
|---|---|
name | skill の識別子。ディレクトリ名と一致させる |
description | モデルがこれを選ぶかどうかは、この一行だけで決まる。「どういうときに使うべきか」を書く。「これは何か」を書かない |
そのまま使える最小のファイル:
---
name: release-notes
description: リリースノートをまとめるときに使う。ユーザーが「release notes を書いて」「このバージョンで何が変わった」「リリース」と言ったら使う。
---
# リリースノート
## 素材の取り方
```bash
git describe --tags --abbrev=0 # 前のタグ
git log --oneline <前のタグ>..HEAD # このバージョンのコミット
```
## 出力フォーマット
三つのセクションに分け、各セクションは箇条書き、一項目一行。ユーザーが体感できる変化を書き、内部のリファクタリングは書かない:
- **追加** —— このバージョンでできるようになったこと
- **修正** —— 何を直したか、症状を一文で
- **非互換** —— アップグレード時に手を入れる必要があるもの。なければセクションごと書かない
## 境界
- バージョン番号を自分で作らない。`pyproject.toml` の `version` から読む。
- あるコミットがユーザーに体感されるかどうか判断がつかないときは、列挙して質問する。ユーザーの代わりに決めない。
本文の書き方に強制はない —— コンテキストに読み込まれる一片のテキストにすぎない。 plugin/skills/example/SKILL.md の書き方を参照:いつ使うか、手順、出力はどんな形か、境界はどこかをはっきり書くほうが、 背景知識を積み上げるより役に立つ。
第三歩:読み込まれたことを確認する。 確実に分かることを一つだけ調べる —— ディレクトリが実際にあるかどうか:
cd /path/to/flower
python3 -c "from flower.core.agent import PLUGIN_DIR; print(PLUGIN_DIR, PLUGIN_DIR.is_dir())"
/path/to/flower/plugin True と出て初めて、build_options() のあの if に入ると分かる。 False なら読み込まれていない。しかも実行時にエラーは出ない。下の警告を参照。
「一言走らせて example skill が呼ばれたか見る」を検証にしないこと。 skill は確率的だ:モデルが呼ばなかったのは、 インストールされていないせいかもしれないし、単に今回のタスクに必要と思わなかっただけかもしれない —— この信号では二つを区別できない。 さらに build_options() は SDK のセッションレベルの skills= オプションを一度も設定していないので、plugin 内の skill が コーディネーターの選択肢リストに現れるかどうかは実測されていない。上の PLUGIN_DIR の True/False は確実なので、そちらを使う。
特定のワーカーにどの skill を開くか名指しするには worker(..., skills=[...]) を使う (flower/core/roles.py)。 名前は SKILL.md の name。SDK は プラグイン名:skill名 という限定表記も受け付ける。
インストールされた flower には plugin/ がない —— 三つのインストール方法すべてで
PLUGIN_DIR は flower/core/agent.py から三階層上って plugin/ に入る。ソースの checkout から動かすときは それがリポジトリルートの plugin/ になる。しかし wheel は flower ディレクトリしかパッケージしない (pyproject.toml の [tool.hatch.build.targets.wheel] packages = ["flower"])。site-packages に入った後は site-packages/plugin が存在せず、PLUGIN_DIR.is_dir() は偽 —— 黙ってスキップされ、エラーも警告も出ない。
これはコンテナの問題ではなく、範囲はずっと広い。 install.sh のどの経路も —— uv tool install、 pipx install、uv をブートストラップしてから uv を使う経路、そして pip install --user のフォールバック —— インストールするのは wheel だ。つまり一行でインストールした flower では、ドメイン能力パッケージは一律に黙って無効化される。 コンテナは同じ問題の一インスタンスにすぎない:docker/Dockerfile は pyproject.toml、flower/、examples/ しか COPY しておらず、plugin/ はイメージに入っていない。
issue #15 に記録した。インストール後はまず上の PLUGIN_DIR コマンドで自己診断すること:False が出たら、今回のインストールにはドメイン能力パッケージが入っていない。 ドメイン能力パッケージを使うなら、いまのところソースの checkout から動かすしかない。
setting_sources=[] がなぜドメイン能力を plugin に追い込むのか¶
同じ関数の中にこの一行もある:
SDK のデフォルトは None = 三つのソースをすべて読む:~/.claude/settings.json(ユーザー)、 .claude/settings.json(プロジェクト)、.claude/settings.local.json(ローカル)。flower はデフォルトで [] を渡し、 これらをすべて切る。
| 読むか | 帰結 | |
|---|---|---|
~/.claude/(ホストマシン) | 読まない | マシンを変えても挙動が同じ。「自分のマシンでは設定してある」で結果が変わることがない |
プロジェクトの .claude/ | 読まない | .claude/skills/、.claude/agents/ に置いたものは flower の下では一つも効かない |
plugin/ | 読む | パスがコードに固定されており、リポジトリに付いて回る |
| 認証情報 | この経路を通らない | 必ず自前の .env を用意する。~/.claude/settings.json と settings.local.json の env ブロックは最後のフォールバックにすぎず、9 個の認証情報キーしか取らない。設定を参照 |
.claude/ が効かないのは設定漏れではなく、この制約の定義そのものだ:ホストマシンから 1 バイトでも読む限り、 「マシンを変えても挙動が同じ」は成り立たない。したがってドメイン能力の通り道は一つしかない —— リポジトリに付いて回る plugin/ だ。
スイッチは二つ(どちらも build_options() にあり、デフォルト値がポータブルな側):
| 引数 | デフォルト | 変えるとどうなるか |
|---|---|---|
portable | True | False を渡すと setting_sources が ["project"] になり、プロジェクトの .claude/ を読み始める(SDK 側:CLAUDE.md を読むには "project" を含める必要がある)。ポータビリティはそれと引き換えに失われる |
use_plugin | True | False を渡すと plugin/ を一切マウントせず、ドメイン能力は AgentSpec.instructions 頼みになる |
ついでに:instructions は追記(system_prompt の append)を通り、 plugin とは別の通り道だ —— 前者は毎ターンコンテキストに載り、後者は必要に応じて読み込まれる。 短くて必須の規律は instructions に、長くてたまに役立つ知識は skill に書く。
三、ドキュメントサイト¶
いま読んでいるこのサイトは mkdocs-material で作られており、ソースはリポジトリの docs/ 配下にある。 main に push すれば自動で公開される。
| 要素 | 何か |
|---|---|
| 設定 | mkdocs.yml、docs_dir: docs |
| 多言語 | mkdocs-static-i18n、docs_structure: folder —— docs/zh/、docs/en/……デフォルト言語は zh |
| 依存 | docs-requirements.txt(バージョン固定)。pyproject.toml の docs extra ではない —— CI が入れるのは前者 |
| ビルド | mkdocs build --strict。壊れた内部リンクや、存在しないページを指す nav はビルドを失敗させる。404 を黙って公開したりしない |
| リダイレクト | hooks/redirects.py。ビルドの後に最終 URL に従って meta-refresh のスタブページを書き、古いフラットなアドレス(/start/、/workflow/、/case-ht001/……)を新しい位置に繋ぐ |
| デプロイ | .github/workflows/docs.yml → actions/upload-pages-artifact@v3 + actions/deploy-pages@v4、GitHub Pages に公開 |
ローカルでドキュメントを直すとき:
CI のトリガー条件は main への push かつ変更が以下のパスにヒットすること。加えて Actions ページから手動で workflow_dispatch もできる:
install.sh はなぜ Pages から配るのか¶
ビルドステップの末尾にこの一行がある:
インストールスクリプトがサイト成果物に押し込まれる。結果としてドキュメントサイトのドメインにぶら下がり、 一行インストールはこうなる:
理由は極めて実際的だ:raw.githubusercontent.com は中国国内から通らないが、*.github.io は通る(実測)。 スクリプト自体はリポジトリルートに置いてあり、公開時に一部コピーするだけ —— 二つの内容を保守する必要も、追加の CDN も要らない。
install.sh 自身がやること:Python のツールインストーラを一つ選び(uv > pipx > uv を入れる > pip --user)、 GitHub から flower をインストールし、次の一手を案内する。認証情報には触れない —— 初回に flower を走らせると聞かれ、 ~/.config/flower/.env に保存される。